Life Cafe Vol.88
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10◎取材協力東京都台東区浅草橋2丁目1番10号うちわといえば、日本の暑い夏の風物詩として定番です。房州うちわの特徴は、骨と持ち手が一体となっていて、竹の持ち手が手に馴染み、扇ぐとしなりが感じられることにあります。近年見かけるプラスチック製のうちわには竹のようなしなりがないため、竹製ならではの自然な風を感じられます。また、千葉県の伝統的工芸品でもあり精巧な逸品のため、贈り物や飾りとしても人気があります。その起源は、江戸時代に武士が弓を作る技術を用いて、竹を細く割き骨を作る、「江戸うちわ」に由来します。竹一本という少ない材料でつくることができるため、江戸の庶民に広く親しまれるようになりました。やがて、関東大震災で甚大な被害を受けたことにより、竹の原料地である房州(千葉県南部)へ製造拠点が移転します。移転により材料の調達から完成まで一貫して製造できるようになり、「房州うちわ」が誕生しました。現在、繊細な技術を必要とする房州うちわの作り手は減少し、希少なものになっています。このうちわを取り扱う松根屋では、歴史ある伝統的工芸品の発信地として、うちわ作りを体験できるワークショップを開催しています。この夏は、日本の伝統的工芸品と親しみながら、涼を感じてみてはいかがでしょうか。「割竹」と呼ばれる技法で、一本の竹を細く割き、糸で編んで形成します。多数の骨を一本一本整えて糊を付け、よれないように薄い和紙を貼る手つきは、まさに職人のなせる技。さきだけ持ち手は、竹の丸みをそのまま生かした「丸柄」が特徴。うちわで一般的な形の「丸型」(左)の他、楕円形で横長の「大和型」(右)があります。弓なりに反った鎌を当て、小槌で叩いてうちわの形に裁断。断面は細い紙を丸みに添って貼る「へり付け」という作業を行います。繊細で慎重な工程を繰り返すことで伝統的工芸品の房州うちわが出来上がります。まるえ株式会社 松根屋しなやかな竹が生み出す爽やかな清涼「房州うちわ」

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